あさひさんぽ

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あさひ舟川「春の四重奏」のものがたり

あさひ舟川「春の四重奏」

残雪の北アルプスを背景に、桜並木とチューリップ、菜の花が奏でる、あさひ舟川「春の四重奏」。
物語あふれる舟川新地区をご紹介します。

 

舟川新地区の素晴らしき先覚者
町道沿いに整然と住宅が並び、その周辺に農地が広がる舟川新地区。時代の先を見据え110年前に舟川新耕地整理事業が、藤井十三郎氏(当時23)と山崎市次郎氏(当時24)の二人の若者の指揮で行われました。明治35年から10年をかけ73haの耕地整理と、散在していた住宅と納屋70軒余りの宅地整理、福利施設として共同浴場や消防用設備、肥料の製造販売を行う共有合資会社の設立等も含めた農村総合整備が全国に先駆け進められました。藤井氏は、惜し気もなく私財を投げ打ち、屋敷林を住宅の建材や費用にあてました。この明治時代の農村総合整備事業のおかげで、人工物のない大パノラマが広がります。
若き素晴らしき先覚者の志を受け継ぎ、次なる時代に向けて、平成23年~30年にかけてほ場整備が行われ、10a区画から1ha規模の大きな田んぼへと整備され、省力化が図られました。


(左)山崎市次郎 (右)藤井十三郎


明治時代 耕地整理前


耕地整理後


平成23~30年 再耕地整理

 

舟川べり桜並木
1957年舟川の河川改修の際、地元舟川新の皆さんが「将来ここでお花見を楽しもう」と、ソメイヨシノが植えられました。さらに、2000年に堤防を広くする工事を行った際に、畑側に40本のソメイヨシノが追加で植えられました。
舟川新地区のみなさんが、「自分たちの桜」という誇りを持って、下草刈り、剪定、防除、ゴミ拾いなど長年丁寧に管理してくださっています。一部ソメイヨシノが枯れてしまったところには、代わりに神代曙やオオシマザクラが植えられ、1.2㎞に渡り280本の見事な桜トンネルを楽しめます。映画「少年時代」や「春を背負って」にも、この舟川べりの桜並木が登場します。
舟川べりの桜はすでに樹齢65年を超え「老齢期」に入っており、幹の空洞化や枝枯れなど、少しずつ木が弱って来ています。しっかり管理すれば、弘前公園の最古のソメイヨシノのように樹齢100年を超えられるかもしれない!と、樹木医に調査してもらい、280本の桜を1本ずつ台帳管理しながら、桜の長寿命化の対策に取組んでおられます。桜の木が65歳を超えてからは、アイオン2台で桜の根元に5~6箇所穴をあけて遅効性の固形肥料を与える施肥作業を行っています。


舟川べり桜並木


真冬の防除作業


桜の長寿命化対策(施肥作業)


ゴミ拾い

 

あさひ舟川「春の四重奏」
富山県でのチューリップ栽培は、大正7年に砺波で水野豊造(ぶんぞう)が10球あまりの球根を植えたことからはじまり、今では富山県は、全国一のチューリップ球根の産地となっています。
砺波から県内各地に広まり、昭和30年代に舟川新地区でも数人の農家が栽培をはじめ、全盛期には30軒ほどに増え、その頃は、チューリップと桜を同時に楽しめていたそうです。舟川新は、砺波や高岡に比べると水はけが悪く、球根栽培は大変手間暇がかかるため、転作作物として取組む農家は少しずつ減り、今では「チュリストやまざき」さん1軒だけになってしまいました。農家が減り、市場で人気の品種が移り変わったことで、いつしかチューリップと桜は同時には見られなくなっていました。
そこで、チュリストやまざきさんが、2009年に桜に合わせて極早生のチューリップの品種「ピランド」をオランダから導入し、菜種油を採るための菜の花も植えたところ、残雪の朝日岳を背景に、桜並木、チューリップ、菜の花が奏でる四重奏が奇跡的に揃いました。
その後、菜の花が遅れる年が続いていましたが、農事組合法人ふながわが、早生咲きの菜の花を緑肥用として栽培し、山崎さんも、食用や早生咲きの品種を増やして、四重奏を少しでも長く楽しめるようにと試行錯誤されています。※今年は、秋の長雨の影響で、早生咲きの菜の花がうまく行きませんでした…。
ヒバリが鳴いて春爛漫の風景は、まさにこの世の楽園。奇しくも仕掛け人は、前述の山崎市次郎氏の孫である山崎久夫さんです。後継者として、娘婿の修二さんご夫婦が脱サラして農業を引き継ぎ、毎年挑戦し続けてくださっています。

あさひ舟川「春の四重奏」
あさひ舟川「春の四重奏」

 

チューリップと桜の美しい循環
チューリップの花をそのまま咲かせておくと種が出来て球根の養分が取られてしまいます。そこで、球根を大きく育てるために花を摘み取ります。機械化されているとは言え、刈り残しや茎の短い品種ではやはり人の手が必要になります。前屈みでぬかるむ広い畑を歩きながら花びらを摘み取る作業は重労働。球根栽培の大変さを少しでも感じていただけると、春の四重奏の風景がより輝いて見えると思います。
摘み取られた花びらは、「お礼肥え」として桜の根元に撒かれて肥料となり、桜の幹を大きく育てています。舟川べりの見事な桜トンネルとチューリップが、美しい循環でつながっています。


チューリップの花摘み 花よりカラフルなお母さんたち


桜並木の根元にお礼肥えとしてまかれるチューリップの花びら

 

春夏秋冬会いに来て!
JAみな穂青壮年部主催の「田んぼアート田植え」が毎年5月下旬に開催され、150名ほどの親子がご参加くださっています。チュリストやまざきさんが描かれた設計図を基に、田んぼのキャンバスに数種類の古代米を手植えして絵を描き、稲の成長とともに表情の変化を楽しめます。収穫したお米は「田んぼアート米」として販売され、白米1合に大さじ1杯の田んぼアート米を入れて炊くと赤飯のようにピンクに色付き、もっちりおいしくいただけます。
また、舟川の畔に彼岸花約3万球が地元の皆さんの手で3年かけて植えられ、年々株が育ち9月下旬~10月上旬に真っ赤な彼岸花の絨毯が広がります。
さらに、2023年初挑戦でひまわり畑も広がりました!チュリストやまざきさんが、チューリップ球根栽培の緑肥として、これまでのソルゴー(イネ科)に代わり、ひまわり栽培に挑戦してくださっています。
夏にはホタルが舞い、冬には白鳥が飛来し、桜並木に雪の花が咲き、チューリップ畑は真っ白な毛布に包まれて静かに春を待ちます。舟川新地区のみなさんのおかげで、舟川べりは、一年を通して感動に出会える場となっています。


舟川べり田んぼアート


舟川べり彼岸花真っ赤な絨毯

舟川べりひまわり畑

舟川べりひまわり畑

 

あさひ舟川「春の四重奏」
~この景色をずっといつまでも~

・公園、観光農園ではありません。
・お米を育てている田んぼで、転作作物としてチューリップ球根と菜種油用の菜の花を栽培しています。
・農業の営みのおかげで楽しめる風景を、大切に守って行きましょう。

〇畑の中やあぜ道には入らないでください
・靴の裏についた土から病気が球根全体へと広がってしまいます。風景は砂利道から眺めましょう。

〇農家さんを応援する気持ちでお花見をお楽しみください
・日々、病気のチェックで畑を回ります。
・チューリップの花をそのまま咲かせておくと種が出来て球根の養分が取られてしまいます。球根を大きく育てるために花を摘み取る作業を行います。
・定期的に薬剤散布を行います。農薬がかからないように風上へご移動ください。
・菜種油を採るための菜の花畑です。畑に入ったり花を折ったりしないで下さい。

〇ゴミはお持ち帰りください

〇三脚を用いての写真撮影はお控え下さい

〇私有地には立ち入らないでください